ひまりとの生活は、毎日が楽しくて充実していた。勤務が終わって、帰って寝るだけだった俺の生活に彩りを添えてくれる。

 ただ俺は、ひまりとの距離感に悩んでいた。

 本当は、抱きしめたいしキスもしたい。もちろんそれより先も……

 でも、彼女は男と付き合ったことがないと言っていた。それは俺にはとてつもない喜びだが、慎重にもなってしまう。

 それでなくても、火事で行き場のなくしたひまりを半ば強引に同棲へと漕ぎつけたのだから……

 俺にとっては同棲だが、ひまりはきっと同居もしくは居候だと思っていそうだ。怖がらせてはいけないと、手出しできないままの関係が続いている。

 でもそんな関係から一歩先へ進みたいと悩んでいた矢先、夜になってもひまりが帰って来ないのだ。

 勤務の次の日は非番だと知っているから、遅くなるなら連絡があってもよさそうなのに、待てど暮らせど連絡がない。

 ふと先日の火事を思い出し、何か事件に巻き込まれているのではないかと急に不安になった。