「ひまりー帰ろう」
「うん」

 仕事が終わって幼稚園を出ると、先生からごく普通の友達同士に戻る。

「ねえ、どこかで食べて帰らない?」
「いいね! 何にする?」
「うーん、何でもあるから居酒屋は?」
「賛成! 酔いたいかも……」
「どうしたの? ひまりがそんなこと言うなんて珍しい。聞きたいことが山ほどあったから、今日は飲もう!」

 さすがに、幼稚園の近くの居酒屋は気が引けるので、亜沙美の住む駅の近くまで行ってから店に入った。

「「かんぱーい」」

 普段は、翌日のことを考えて飲まないようにしている。でも、今日は飲みたかったのだ。

「で? 火事に遭ったはずが、泊めてとも言ってこなかったのに、急に泊めてって何があったの?」
「うん……。話せば長いんだけど……」

 私は消防署の見学から、彼女が現れたところまでを事細かに話した。

「何? その女。本当に彼女なの?」
「え? そこ? 消防署で見かけたから同僚なのは確か」
「だって、その消防士の大崎さん自身がひまりの入院する病院まで来てくれたんでしょう?」