幼稚園の同僚に泊めてもらえないかとメッセージを入れた。するとすぐに返信が来て、数日なら構わないという。

 翌朝、数日分の服を入れた鞄を持ってマンションを出た。いつも通り朝食の準備はしたし、掃除や洗濯も終わっている。

「おはよう。亜沙美ごめんね」
「おはよう。別にいいけど急にどうしたの? 何かあった? 住むところあったんだよね?」

 矢継ぎ早に質問が飛んできた。

「その話はあとで」
「そうね」

 亜沙美は年少の一クラスを受け持っている。お互いに朝のんびりと話をしている余裕はない。

 園児達の登園までにやるべきことが山のようにあるのだ。

 私自身に辛いことがあっても、園児達には関係ない。いつも通り先生として子供達を指導する。

「先生さようならー」
「さようなら」

 怪我もなく帰って行く子供達を見送って、ホッと肩の荷が下りるのだ。

「はぁー」

 誰もいなくなった保育室で、やれやれと無意識に溜息が出てしまうのも許してほしい。