オレンジのヒーローは永遠の愛を誓う

　そんなズルい私を神様は許してくれない――

　幼稚園での勤務を終えて、マンションのエントランスへ入ろうとした時だった。

「ねえ」

　後ろから誰かを呼んでいる女性の声が聞こえる。でもマンションに知り合いはいないし、私がここに住んでいることは誰も知らないので、自分が呼ばれているとは思いもしない。

「ちょっと無視するの？」
「え？」

　最初の呼びかけよりも至近距離で強い口調が聞こえたので、足を止めて振り返ると見たことのある人がそこに立っていた。

「あなたに用があるの！」
「私？」
「そう。大崎さんの優しさに甘えてる図々しいあなた」
「へ？」
「何のことかわかりませんみたいな顔して腹が立つ」
「……」

　攻撃的な目の前の女性は、消防署の前を通った時に『大崎さん』と呼び掛けていたグレーの服を着た女性に間違いない。

「凛太郎さんは、今日は勤務のはずですが……」
「凛太郎さん？　呼び方まで図々しい」

　そんなことを言われても、どう返していいのかわからない。