ドライブから予期せぬ宿泊をすることになって、楽しい思い出になった。
 
 火事の日から、夢の中にいるような現実とは思えない時間を過ごしている。一歩間違えば、失っていた命が助けられて、信じられないことが起きているのだ。

 凛太郎さんには感謝してもしきれない。

 そしていよいよ仕事へ復帰する日が来た。通勤距離が格段に縮まって、朝の準備の時間に余裕ができる。

 自分の朝食と一緒に、二人分用意した。凛太郎さんは、私と入れ違いで仕事から帰って来る。置いていたらきっと食べてくれるはずだ。

 新生活は順調で、料理や掃除、洗濯など余裕のある方がすることになっている。お世話になる私がすると言っても納得してもらえなかった。一人暮らしの長い凛太郎さんは、何でも器用にこなすのだ。

 出勤時間を迎えて、部屋を出る。マンションの出入りだけが、まだ慣れないし当分慣れそうにない。

 ドキドキしながらエレベーターへ乗り込み、足早にエントランスを出た。