「今のしゃべり方がいい」
「……うん」

 海を見て開放的な気持ちになって敬語が抜けていた。でも、それが凛太郎さんには良かったみたいで。

「車を止めて砂浜に降りるか?」
「いいの?」
「ああ。せっかく来たんだ。楽しもう」

 海沿いに駐車場を見つけて車を止めた。

「ほら行こう」
「うん!」
「ハンソク……」
「何か言った?」

 ボソッと呟いた凛太郎さんの言葉が聞こえなくて、聞き直しても教えてもらえない。

「手」とひとことだけ言って、私の手を取り駐車場から砂浜へ下りる階段をエスコートしてくれる。そのさり気ない動作にもきゅんとするのだから、私は一体どうしてしまったのだろう……

 白い砂浜を手を繋いで散歩する。ザクザクと砂の上を歩く音と、ザパァンと波の打ち寄せる音、鳥の鳴き声が聞こえる。

 時折潮風が肌を撫でていった。

「もう少し波打ち際まで行くか?」
「うん!」
 
 ふと、遥か昔の海での記憶が蘇る。小さい頃、家族で海へ来たことがる気がするのだ。