「昨夜は静かな夜で、仮眠できたんだ」
「そうなんですか?」
「ああ」
「じゃあ着替えたいので、一度マンションへ寄ってもらってもいいですか?」
「ああ、俺もシャワーだけ浴びたい。仕事から帰ってあのメモを見て慌てて家を飛び出したから」
「ふふっ、ご心配をお掛けしました」

 私が悪いわけではないけど、必死になって駆けつけてくれた凛太郎さんを思い浮かべると申し訳なく感じる。

「どこへ行きたい?」
「海が見たいです」
「いいな。海までドライブだ」

 一旦マンションへ戻って、身なりを整えて出発した。コンビニで飲み物と朝食を購入して、車は高速を走っている。

 うちには車なんて贅沢なものはなくてどこへ行くのも公共交通機関を利用する。男手がなくて、困ることも時々あった。それでも他の子より不幸だと思ったことがなかったのは、母のお陰だと思う。いつでも前向きな母がいたから、私も頑張ってこられたのだ。

 母がいなくなって寂しかった私の人生が、いきなり変化する。