「ずっと女子校だったのか?」
「短大は女子校でした。でも、高校までは共学ですよ。地元の公立に行っていたので」
「おかしいな」
「まあ、ご存知の通りお年寄りの中で育ったんですけど」

 山手の団地までの終バスの時間は早くて、いつも友達よりも早く帰っていた。今でこそ、働いてお給料をもらってるから、終バスを逃してもタクシーに乗れるけれど、学生の間は到底無理な話で乗り遅れないように必死だった。

「俺にとってラッキーだったってことだな」

 一人で納得している凛太郎さん。私には何がラッキーなのか理解できない。

 就職して引っ越しもできたけど、母との思い出の場所から離れる決心ができなかったのだ。

 今回の火事は、私が新たな未来へ進むきっかけになったことは事実で、こうして凛太郎さんと出逢った。

 あの時、まだ来てはダメだと言った母の姿が思い出される。

「なあ、今からドライブに行かないか?」
「え?」
「嫌か?」
「いえ。でも、勤務明けですよね?」