◇◇◇

「ひまり! ひまり!」

 どこかで私を呼んでる声が聞こえる。でもまだ眠くて目が開かないのだ。

「ちょっとうるさいわね! ひまりちゃんが起きちゃうでしょう?」
「誘拐犯に言われたくないね!」

 ゆ、誘拐⁉ 物騒なワードが聞こえて飛び起きた。

 見たことのない部屋の、寝心地の良いマットレスの上で寝ていたようだ。

「えっと、ここはどこ?」

――バンッ

 昨夜のことを思い出すより先に、凛太郎さんが勢いよく部屋へ飛び込んできた。

「大丈夫か?」
「へ? はい」
「仕事から帰ったら変なメモが置かれてるし、ひまりがいないしで生きた心地がしなかった」
「変なメモ?」
「ああ。ひまりちゃんは誘拐した。身代金を用意しろって書かれてた」
「ええっ?」

 私が準備している間に、凛子さんがメモを残してくれたはずだけど、まさかそんなことを書いているとは……

「字が姉貴だったし、インターフォンに映像が残ってたから慌てて迎えにきた」
「私、双子ちゃん達と寝ちゃったみたいで。ここは?」