先日の会話で、姉に借りていると言っていたので、この機会にお礼を伝えなくてはと思った。

「まあ、凛太郎からそんなことまで聞いてるのね。そうなの」
「私、昨日からこちらでお世話になっていて……」
「同棲を始めたのね」
「違うんです!」
「え?」

 同棲を否定した私を、きょとんとした表情で見つめている。

「先日、私の住んでいた団地が火事になりまして」
「ええ? 大丈夫なの?」
「はい。凛太郎さんに助け出してもらって、数日の入院で済みました」
「命が助かって良かったわ」
「はい。でも住むところや荷物が、何もかも焼けてしまって……」
「それは大変だったわね……」
「身寄りもいなくて一人の私を凛太郎さんが心配してくれて、同居を提案してくれたんです」
「そうなのね」

 この時、姉の凛子は瞬時に凛太郎の気持ちを理解たが、敢えて口にしなかった。

「しばらくお世話になります」
「いつまでもいたらいいわよ」
「そういう訳には!」

 そして、凛太郎の気持ちがひまりに伝わってないことも、姉は理解したのだった。