まず私がすることは、役所に行って証明書類を発行してもらうことだ。市営の団地なのでこれからの手続き方法も確認しなくてはならない。

 銀行に行って通帳を再発行してもらって、スマホも解約しなくては……

 やることリストを作り始めるとたくさんあって嫌になった。でも、のんびりはしていられない。仕事に復帰したら平日は動けないのだから。

 凛太郎さんがメモと一緒にカードキーを置いてくれていた。さっと準備をして部屋を出る。

 恐る恐る玄関扉を開けて通路を見ても人の気配がなくホッとした。きっとこんなに大きなマンションだと、隣近所にどんな人が住んでいるのか知らないのが普通かもしれない。私の育った環境では、団地全体が親戚のような関係だった。

 祖父母がたくさんいるような……

 悪いことをしたら怒られるし、困った時は助けてくれる私にとっては大切な存在だったのだ。

 今は慣れないマンションで、疚しいことはないのに誰にも会わないことを願って、エレベーターまで早足で向かう。

「はぁー」

 無事にエレベーターに乗り込んだだけで、安堵の吐息が漏れる。