手が塞がっている凛太郎さんの代わりに玄関の扉を大きく開く。玄関はピカピカで広い。

「どうぞ」
「お、お邪魔します」

 今日からここでお世話になるけれど、夢でも見ているようだ。当たり前だが堂々と室内へ入る凛太郎さんの後ろを、おどおどしながら追っていく。

「その扉を開けてもらえる?」

 廊下の突き当りにある扉を開けると――

「……」

 人間驚き過ぎると声も出ないもので、今がまさしくその時だ。正面の窓の外には絶景が広がっている。私が幼い頃から見ていた山手の景色とは違う都会の景色だ。

「固まってるけど、本当に高所恐怖症じゃないんだよな?」
「は、はい。現実離れしたマンションに驚いてます」
「幼稚園から近いだろう?」
「はい」
「そこの窓から見えるぞ」

 幼稚園からもこのタワーマンションは見えている。私には縁のないマンションだと思っていたのに、人生とはわからないものだ。

 家が燃えて不幸のどん底だったのに、今はイケメンとここにいる。