言われた通りに翳すと目の前の自動ドアが開いた。

 エレベーターホールになっていて、三基ずつ向かい合わせで並んでいる。

「こっちが20階までで、そっちがそれ以上の階用。うちは20階だからこっち」
「はあ」

 今まで団地住まいで五階まで階段で上がっていた私からしたら、現実だとは思えない。

「ボタンを押して」
「はい」

 上の矢印のボタンを押すとすぐにエレベーターが到着した。

「20階」
「はい」

 一番上にあるボタンを押す。すると音も揺れもなく、ぐんぐんと上昇していく。すぐに到着して扉が開くと、私が知っているマンションとは異なる空間が広がっていた。

「こっち」
「はい」

 さっきから『はい』しか言っていない。他の言葉が出て来ないのだ。長い廊下の端まで来ると、他の部屋と違い門があって扉の前に空間がある。

「ここ。門を開けて扉にカードを翳してもらえるか?」
「は、はい」

 マンションなのに門があって重厚感を醸しだしていた。