だったら住ませてもらう前にご挨拶へ伺わなくていいのだろうか。

「勝手に居候させてもらっていいんですか?」
「ああ、気にする必要はない。まあ、その服を姉に用意してもらったから、薄々気づいているかもしれないな」
「ええ? ワンピースまで! お礼を言わないと……」
「まあ、嫌でもそのうち会うだろうし、その時でいいよ」

 礼儀知らずだと思われないだろうかと不安になる。

「さあ、話はこの辺にして部屋へ行くぞ」

 車から降りて凛太郎さんがトランクから大量の荷物を出す。

「持ちます!」
「大丈夫だ。日頃から鍛えてるから余裕だ。それとも俺はそんなに非力に見えるか?」
「いえ、そんなことは」

 今も荷物を持つ腕の筋肉がムキムキで思わず見てしまうくらいだ。

「行くぞ。俺のポケットにカードケースが入ってるから取ってもらえる?」
「はい」

 お尻のポケットにカードケースらしき形が浮き出ている。そっと手を入れて取り出した。

「それをそこに翳して」
「はい」