終バスの時間や路面の凍結を気にすることもない。同じ市内でも地域が違うと生活スタイルが違うのだ。

 車は、幼稚園と消防署の間にあるタワーマンションの地下駐車場へと入っていく。

「え?」
「どうした?」
「こ、ここ?」
「そうだが? もしかして高所恐怖症とか?」
「高層階なんですか⁇」
「真ん中くらいだな」
「凛太郎さんは何者ですか?」
「は? レスキュー隊員だ」
「……」

 まあ、レスキュー隊員なのは確認しているから本当だけど、消防士さんは公務員のはずだ。夜勤や特別な手当てがあっても、こんなに立派なマンションに住めるものなのだろうか?

 地下駐車場には高級車がずらっと並んでいる。本当にここでお世話になっていいのだろうかと逃げ腰になった。私の怯えた様子に凛太郎さんが気づく。

「もしかして、このマンションに驚いてる?」
「は、はい……」
「ここは姉が買ったマンションなんだ。でも購入後すぐに結婚して旦那さんのマンションへ引っ越したから俺が借りてるんだ」