『私、ここで死ぬのかな……』

 まだまだ子供達の成長を見守りたかった。立派な保育士になって、いつかは自分の子も――
 
 そんなごく平凡な夢だってある。一度は彼氏だって欲しかったし、デートもしてみたかった。

 意識が遠のく寸前で、やり残したことが頭を巡っていく。

そこへ――

――ガシャン!

 大きな音と共に玄関の扉が開いて、オレンジ色の服を着た人が現れた。

「おい! 誰かいるか!」
「は、はい……」

 口に何かを装着しているのか、くぐもった声が聞こえたと思ったら、フワッと身体が浮いて逞しい腕に抱き上げられた。

「おい! って、君は!」
「え……」

 薄っすらと目を開くと、オレンジの防火衣を着た人が視界に入る。

「大丈夫か?」
「はい……」

 返事を返したところで安心して、私は意識を手放した。

――私は夢を見ていた。夢の中では久しぶりに見る母が、川の向こうで笑顔を浮かべて手を振っている。

「お母さん! 今行くから!」

 すると母は、手で大きくバツを作り来るなと言っていた。

「あなたはまだ早いの。こっちへ来てはダメよ!」と頭の中で母の声が聞こえる。

 そして次に目を覚ました時、私は病院のベッドの上だった――