「ほら、焼けたぞ」
「はい! ありがとうございます」

 店に入るとさっと注文を済ませた凛太郎さんが、トングを持って次々と焼いてくれる。絶妙な焼き加減の肉をご飯と一緒に、ひたすら口に放り込み食べているだけの私。

「柔らかいー」
「そうか。もう一枚あるぞ」
「凛太郎さんも食べて下さい!」
「ああ、食べてる。でも、ククッ」
「なんですか?」
「ひまりが美味しそうに食べてる姿を見るだけで腹が膨れる」
「す、すみません」
「どうして謝る? 見ていて気持ちがいい」
「そうですか? じゃあ、遠慮なく」

◇◇◇

 目の前でパクパクと焼肉をほうばっているひまり。小さい身体のどこに入るのか、もりもりと食べている。その姿が意外で可愛すぎて目が離せない。

 ひまりの職場の幼稚園に連絡を入れて病院を聞き出した俺は、なんとか同棲まで漕ぎつけた。ひまり自身は同居だと思っているだろうが、もう手放すつもりはない。本気で落としに行かせてもらうつもりだ。