退院の日――

 前回、凛太郎さんと同居が決まったところで、主治医の先生が来て話は終わった。スマホがないので連絡先の交換もしていない。退院がいつかも知らないはずで、私はどうしたらいいのか病室で悩んでいた。

――コンコン

「はい」
「もう退院できるのか?」
「え? どうして?」
「どうしてって、一緒に暮らすんだから迎えに来たんだよ」
「でも……」
「退院の日を知ってるかって?」
「はい」
「前回来た時に、ナースステーションで手続をして連絡を入れてもらったんだ」
「そんなことできるんですか?」
「今回は特別。ひまりの身内もいないし、退院後は俺のところに住むから説明をして連絡をもらったんだ」
「ありがとうございます」

 そして、凛太郎さんから手に持っていた紙袋を受け取った。

「え?」
「服。病院のパジャマで帰るのか?」
「あっ!」

 就寝中に救出された私は、服もなければ靴もない。病院にいる間は、レンタルしていたけれど、これからのことを考えてもいなかった。

「着替えたら出て来てくれ」

 それだけ言って、凛太郎さんが病室から出て行く。