見学に行ってお世話になったし、私を助けてくれたのかもしれない。でも、個人的に病院まで消防隊員さんが訪ねて来るものなのだろうか。

「あっ、火災の調査ですか?」
「それなら一人で来ない」
「へ? じゃあ……」

 他の理由がわからない。私は大崎さんを見つめて話の続きを待つ。

「現場の状況は聞いた?」
「いえ、まだ何も」
「そうか。薄々気づいてると思うけど、全焼して住める状態ではない」
「はい……」

 意識を失う前のことを思い出すと、命が助かっただけでも良かったといえる。

「救出された近所の人の話では、君は身内もなく一人だと」
「はい……」

 改めて口に出して言われると、とんでもない状況なのだと理解した。

「これからどうするんだ? どこかあてでも?」
「どうしましょう……まだ何も……」

 困惑した顔で大崎さんに視線を向けると、なぜか自信に溢れた顔をしている。

「突然で驚くかもしれないが、俺のところへ来ないか?」
「…………はい⁇」

 言葉の意味が理解できずに大声を出してしまった。