「突然押しかけてすみません。体調はいかがですか?」
「はあ、まあ大丈夫です?」
「ぷはっ、なんで自分の体調なのに疑問形?」
「倒れてた実感もないですし、よく寝てスッキリしたので。あのっ、お医者様ですか?」

 白衣は着てないけれど、病室に訪れる男性はそれ以外考えられない。

「いや。私服だし、医者には見えないだろう?」
「はあ、まあ」

 曖昧な返事を返しつつ改めて男性を見ると、オシャレな私服の下にムキムキの肉体が隠れていることに気づいた。鍛え抜かれた肉体は、隠しきれていない。

「二度会っているが思い出せないか?」
「そうなんですか? うーん」
「まあ、二度目は意識が朦朧としていたが……」
「え?」

 意識が朦朧といえば、火災現場でしかないシチュエーション。そこで、先日の美里先生の言葉を思い出した。

 もう一度、顔をよく見るとあの時の消防隊員さんで間違いない。

「思い出したようだな」
「はい、先日はお世話になりました。でも、どうして?」