何もすることがないので、これからのことを漠然と考える。少しの貯金はあるけれど、きっと通帳も印鑑などすべて燃えてしまったはずだ。こんな時はどうしたらいいのか……

 スマホがあれば調べることもできるのにスマホがない。考えても堂々巡りで糸口が見つからないのだ。

 スマホを新規契約するにも身分証が必要だろうし費用もいる。となると、やはり銀行の手続きが優先になるけど、病院に入院中だ。

 そもそも病院のお支払いも気になるところ……

 そこへ――

――コンコン

 カーテンの向こうの開かれたままの扉がノックされた。

「はい……」

 看護師さんならノックのあと、そのまま入ってくるはずだ。一体誰が来たのかと不思議に思う。

「大崎と申します。お邪魔してもいいですか?」
「は、はあ……」

 バリトンボイスの男性の声が聞こえてきた。大崎? と考えても私には思い当たる人物がいない。

「失礼します」

 カーテンを開けて入ってきたのは、イケメンで高身長の男性。どこかで会ったことがあるけど、すぐには思い出せない。