園児達の顔を思い出すと、いつまでも落ち込んではいられない。退院したら当面はホテル住まいになるのだろう。この機会に幼稚園の近くに住むところを見つけようと思った。

 母との思い出のアルバム類もきっと燃えてしまったはず……

 でも私の中にある母との思い出は、今でも鮮明に残っている。母との思い出の場所を一瞬にして失ってしまったけれど、私が生きていることが失った思い出よりも大事なのだ。

 目覚めたばかりだけど、徐々に現実を受け入れ始めると悩みは尽きない。

「坪井さん、後ほど先生の診察があります。それまでは安静にしていて下さいね」
「はい……」

 スマホがないと誰にも連絡することができない。しばし天井を見つめて途方に暮れる。

 団地の人達の安否もいつになったら知ることができるのだろうか。

 向かいの部屋は数ヶ月前から空き部屋だった。でも、階下は昔馴染みの人達ばかりで、私にとっては祖父母のような存在。無事を祈るばかりだ。

 母が亡くなった時も、親身になって助けてくれたことを思い出す。