看護師さんが私のバイタルをチェックしている間も、心ここにあらずで途方に暮れていた。

 助かったことは喜ばしいが、身一つで放り出されてこれからどうやって生活したらいいのだろうか……

 眠りから覚めた私は、今の状況と現実を受け入れられずにしばらく呆然とする。
 
 まずは、住むところが燃えてなくなってしまった。服や生活用品、通帳や印鑑、大切な物すべて……

 色々と思い悩んでいるうちに、同じ棟に住んでいた馴染みのお年寄り達は、無事に逃げられたのだろうかと心配になってきた。

 非常ベルが鳴った時には、火の気は建物全体に広がっていたと思われる。

 そういえば意識を失う寸前に、誰かに抱き上げられた記憶が残っていた。おぼろげだが、私のことを知っていたような反応に感じたのだ。

 助けてくれた人にもお礼が言いたい――

 そうは思っても、病院から退院しなければ何も始まらない。帰る家もなくなり病院へいる方が困らないと思うけれど、ずっと置いてもらえるわけではないのだ。