到着すると、すでに消防車が何台も消火活動をしている。

 団地の二階部分からの出火で、黒い煙がもくもくと窓から漏れていた。

「住人は?」
「下の階の住人は、火災報知器と非常ベルの音で避難しているのですが、上階は確認できてない部屋があります」
「四階までの住人は避難が確認できました!」

 状況は刻一刻と変わるのだ。一瞬の判断遅れが要救助者の命を左右する。まだ黒煙が酷いだけで、五階まで階段を上がれそうだと俺は判断した。このタイミングで、はしご車も到着している。

「俺が上の階を確認に行きますので、はしご車の準備をお願いします!」
「無理はするなよ!」
「わかってます」

 最悪、階段が使えなくてもはしご車で降ろしてもらえば避難できる。

 昔ながらの外から見える階段を一気に五階まで駆け上がった。後ろからは黒煙が纏わり付く。防煙マスクをしていなければ、肺まで真っ黒になりそうだ。

 向かい合わせの扉の一戸はポストにガムテープが貼ってあるので、住んでいない可能性が高い。