火事から半年――

 平和な日常が続いている。

 突然私の前に現れてお金を無心した父は、なぜかパッタリと姿を消してしまった。今となっては、本当の父だったのかも疑わしく思う。

 そして凛太郎さんとの関係は未だキスだけ――

 最近では、私に魅力がないのかと悩んでしまうほどだ。この関係を一歩踏み出したい。誕生日に勇気を出してお願いしてみようかと考えている。

 三月は、私の受け持つ年長クラス『ぞう組』の子達が卒園を迎える。卒園式の練習が始まっていた。

 そして私は一つ歳を重ねる。

 卒業式の次の日が、私の二十六歳の誕生日。二十五歳は凛太郎さんと出会った忘れられない年。二十六歳も素敵な一年にしたい。

「凛太郎さん」
「どうした?」
「三月は忙しくて、帰りが遅くなるの」
「まだ寒いし、無理するなよ」
「うん。ありがとう」

 冬になると空気が乾燥したり路面の凍結で、火事や事故が増える。毎日忙しいはずなのに、いつも私の心配をしてくれるのだ。

「迎えが必要な時は遠慮なく言うんだぞ」
「うん!」

 優しい言葉が私を笑顔にしてくれる。