亜沙美が来てくれて良かった……

「大崎さんから連絡があったの」
「え?」
「今日は迎えに行けないからって」

 そういえば前回あの男が現れてから、凛太郎さんが迎えに来てくれていたので、一人になるのは初めてだ。

 心配して幼稚園に連絡を入れてくれたことで、身も心も救われた。

「ありがとう」
「大丈夫? 顔色悪いよ」
「う、うん……」

 自分が思っている以上にショックで手足が冷たくなっている。

 どうしてあんな男が私の父なのだろう。何年経っても変わらないらしい。

 縁を切るにはどうしたらいいのだろう――

 私の気持ちが届いたのか、この日を最後に父と会うことがなくなる。

 幻だったかのように、私の悩みは消えた。