数日後、私の気持ちなど微塵も考えていない父がまた現れた。

 前回同様、仕事終わりに待ち伏せされる。

「ひまり」
「また! 何の用ですか?」
「そんな冷たいこと言うなよ。親子じゃないか」
「よくそんなことが言えますね!」
「あの男と結婚するのか?」

 あの男とは凛太郎さんのことを言ってるのだろう。

「あなたにお答えする必要はありません」
「まあいい。なあ、火事に遭って火災保険が出たんだよな」
「はあ? 何を……」
「少しお金に困ってて」
「ふざけないで下さい!」
「ふざけてない。助けてくれよ」

 最低な男だとは思っていたけど、ここまでだと思っていなかったのでショックを受ける。

「少しでいいんだ」
「……」

 言葉が出ずに立ち尽くす私へ近づいて来ようとしていた。

「警察! こっちです!」

 幼稚園の方から亜沙美の声が聞こえてくる。

「ちっ」

 舌打ちをした目の前の男は、前回同様走り去っていった。

「ひまり! 大丈夫?」
「う、うん。どうして?」