「どうする? 今日は帰ろうか?」
「ううん。行きたい!」

 せっかく楽しみにしていたのに、出鼻を挫かれた気分だ。もう会いたくない……

 ドライブを楽しみ、夜景の綺麗なレストランで食事をした。でもどこかであの男の存在が、楽しさを半減させる。

 養育費さえきっちりと払ってくれていたら、お母さんが過労で倒れることがなかったかもしれないのだ。

 恨みはあっても、感動の再会とはならない。

 凛太郎さんに心配を掛けないように、元気に振る舞っているつもりだっだけど……

「ひまり、無理することはない」

 私の哀しい気持ちを理解して、抱きしめてくれる。優しくされると涙が自然と溢れてきた。

「泣きたいだけ泣いたらいい」

 小さい頃から父がいないことで寂しい思いをしたこともある。母が苦労してきたのを見てきた。顔を知らない父を恨むことで、この気持ちを消化してきたのだ。

 今頃なんで……

 凛太郎さんがいなかったら、私は耐えられなかったはずだ。