本当に心配してるなら、こそこそしなくても方法はあったに違いない。

「ひまり、どうした?」
「凛太郎さん……」

 私が遅いので心配して見に来てくれたのだ。

「どちら様?」
「ひまり、また改めて会いに来るよ」

 父だと言う男は、なぜかその場を逃げるように去って行った。

「大丈夫か?」
「う、うん」
「誰だ?」
「父だって言ってた」
「はあ?」

 私の知っている幼い頃に別れた父のことと、今の男性から声を掛けられた経緯を話した。

「今さら何の用だ?」
「わからない」
「火事で知ったとしても、現れるの遅くないか? ひまりと似てないしな」
「私も思った」
「お母さんは連絡を取っていたのか?」
「連絡を取っていたら、連絡が途絶えた時に会いに来るよね……」
「確かに。じゃあ何の用だ?」
「わからない」

 本当に父だとしても、養育費も払わず母に苦労を掛けた男を私は父とは認めない。

 凛太郎さんを見て、不自然に去って行ったことも気になった。