ケガもトラブルもなく、なんとか無事に消防署へ到着した。それだけで、ひまりは大仕事を終えた後のような疲労感に襲われている。

 子供達の声が聞こえたのか、署員が出て来てくれた。小柄なひまりが見上げるほどの高身長で整った顔立ちの彼は、消防署員というよりはモデルと言われた方がしっくりくる。オレンジの服を着ているということは、消防署の隊員なのだろう。

「こんにちは。つぼみ幼稚園の坪井と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「こんにちは。大崎と申します。今、他の署員も出てきますので、お待ちください」
「はい。みんな、綺麗に並ぼうね!」

 消防車に気を取られて、列がバラバラになっている。特に男の子達が、前へと飛び出しているのだ。そこへ、署内から数人の隊員が出て来てくれる。

「さあ、みんな。ご挨拶するわよ。せーの」
「「「よろしくおねがいします!」」」
「ようこそ。今日は、消防署のことをたくさん学んで帰ってください」
「「「はーい」」」

 そして子供達が一番興味のある消防車の説明から始まった。