学年末考査も無事に終え、いよいよ3年生を送る会前日。
私の学校は送る会の次の日は卒業式というハードスケジュール。
体育館はほぼ卒業式の準備ができている中、進行表を片手に実行委員の人たちと演目をみていた。
部活に入っていないのは私と真緒くんだけということもあり、演目の確認も2人で最初から最後まで見なければならない。
途中から終わった他の実行委員の人も合流してくる予定だが、学校の中での2人きりは何となく気まづかった。
「いた!冴!」
そんな中、救世主結ちゃんが来てくれた。
結ちゃんは真緒くんがやはり気になっているようで、演目の確認が2人きりということを相談するとふたつ返事で来てくれることとなった。
心の中で安堵していると、演目の確認どころでは無いほどに結ちゃんのマシンガントークも始まっていた。
「桜くんだよね?私、冴と同じクラスの片桐結。よろしくね!」
「よろしく。」
「私、桜くんと話してみたくて。冴から今日確認で一緒だからって教えてもらって。」
「そう、じゃあ一緒に確認よろしく。」
「任せて!ね、冴!」
「あっ、うん。よろしく結ちゃん、桜くん。」
サッカー部や野球部、バレー部などの運動部から、茶道部や美術部、調理部などの文化部までが順に演目をしている。
バスケ部の演目が始まると、少し真緒くんの様子が気になって顔をのぞいてみた。
表情は普段と変わらない気もしたが、やっぱりまだバスケが好きなのか悲しい表情にも見えた。
聞かないとは言ったものの、やっぱり気になってはしまう。
そして、演目は最後に華々しく吹奏楽部の演奏で終わり無事確認も全て終え、今日はお開きとなった。
「ねえ、桜くん!冴と私とご飯いかない?もちろん、桜くんの友だちも誰か呼んで4人で!」
帰り道に突然結ちゃんからの提案。
「いいよ、じゃあ快に連絡する」
そう言って、真緒くんもOKし夜ご飯を食べに行くことになった。
ご飯は学校近くのファミレスへ。
真緒くんのお友だちとはファミレスで待ち合わせとなった。
真緒くんが連絡したのは、真緒くんと同じクラスの七尾 快《ななお かい》くん。
私は存じ上げていなかったが、学校では有名な人らしい。
キラキラしていて、お話も上手な人だった。
結ちゃんは1年生で同じクラスだったようで、親しげに話していた。
しっかり人見知りを発揮していた私だったが、コミュ力のある結ちゃんのおかげでいくらか話にも入ることができた。
「あー!楽しかった!快くんも真緒くんも来年同じクラスになれたらいいよね〜もちろん、冴も!」
「確かに、4人で同じクラスになれたら修学旅行も困らないね!」
七尾くんと結ちゃんがノリノリで話している。
そうか、来年度は修学旅行もあるのか。
真緒くんと行けたら楽しいだろうな〜
そんなことを思いながら、結ちゃんや七尾くんと別れた。
「冴、人見知りしてたな快に」
「初めましてだもん。緊張するよ。」
「フッ…昔から変わんないのな。」
久しぶりに2人の会話で笑った真緒くんを見た。
さっきのファミレスでも何度か笑っている姿は見ていたが、2人の会話で笑ってくれたのは何だか特別に嬉しく感じた。