それから真緒くんとは関わりもせず、話すこともなく1ヶ月ほどが過ぎていた。

今は2年の学年末考査直前。

テストの前だというのに、今日は3年生を送る会の話し合いが行われている。

めんどくさいことに、クラスの実行委員として選ばれてしまったのだった。

そして、そこには真緒くんもいた。
転校してきたばかりで関わりがないのに実行委員とは、きっと押し付けられてしまったのだろうと察した。

他クラスの実行委員長を軸に、出し物の案をまとめ、最終的に各部活ごとでの発表をまとめるということになった。


そして、実行委員の中で部活に入っていない私と真緒くんが取りまとめる係となってしまった。


できるだけ、真緒くんとは関わらずに過ごそうと思っていた矢先の出来事にかなり動揺していたが、一方の真緒くんは特に変わらない様子だった。


そして1週間後

さっき担当の先生に声をかけられ、各部活の演目が出揃ったので今日まとめたいと言われた。それを真緒くんにも伝えにいかなければならない。

学校の中だと、幼なじみという関係は隠している。
真緒くんに迷惑をかけてしまいそうだったから。
ただ係として真緒くんに話しかける。
それだけでも緊張していたが、仕事として伝えるため真緒くんのクラスへ向かった。


「あの、すみません。桜くんいますか?」

扉の近くにいた人の目線が一気にこっちへ向くのを感じた。
真緒くんが転校してきてから、女の子たちがひっきりなしに告白しているという噂になっている。
きっと、告白しに来た子と間違えられているかもしれない。
そう思うとさらに緊張した。

「桜〜女の子から呼び出し」

近くにいた男子が真緒くんを呼んでくれた。
面倒くさそうに立ち上がった真緒くんだったが、私を見るなり普段の表情で近づいてきた。

「どした?」
「あ…桜…くん。今日、各部活の演目をまとめるのをやらないとで。放課後、資料室に来てと先生が言ってました。」
「はいよ」

無事伝えることはできたが、みんなに見られている中話すってこんなに緊張するの…
改めて、真緒くんはみんなの注目の的なんだと思わされた瞬間だった。


放課後。
資料室へ行くと、まだ先生も真緒くんも来ていなかった。

「はあ…」

腰を下ろして思わずため息をついていると、扉が開き真緒くんが入ってきた。

「よ。てか、さっきのあれなに。」
「あれってなんですか?」
「教室で言ってた桜くんってやつ。あと、敬語。」
「えっと…知り合いじゃないって方が、真緒くんに迷惑かけないかなと…」
「あっそ。冴がそれでいいならいいけど。」
ガラガラ
「2人ともいるな!」

そんな話をしていると、担当の先生も来てようやく本題の演目をまとめることとなった。

20ほどある部活の内容を見ながら順番を決めて、なんとか決定することができ終了。
気づけば18時近くなり、外も暗くなり始めていた。

「気をつけて帰れよ〜」
呑気な先生は私たちを見送り職員室へ戻って行った。

そして、真緒くんとはそのまま一緒に帰路へついた。
家が近いので自然と一緒に帰る流れになる。

「冴はさ、知り合いじゃないって方が楽?」

真緒くんからさっきの話の続きが始まった。

「余計なことにはならないかなって」
「余計なこと?」
「ほら、小学校の時に1回あったじゃん?付き合ってるって言われたこと。」
「あーそんなこともあったっけ」
「それは真緒くんも迷惑だろうし。」
「○○○」
「ん?」
「なんでもない」

真緒くんがなんて言ったか一瞬車の音にかき消されてしまったが、変わらず知り合いではないように振る舞っていくことになった。

「あっ、でも。」
「でも?」
「2人でいるときはいつも通りでいい?」
「お好きにどーぞ」
「ありがとう、真緒くん。」

そんな話をしながらの帰り道。
何年か前の自分たちに戻った気もしながら家へ帰った。