早いもので気づけば年末も迫っていた。

今日は12月25日。
世の中でいうクリスマスの日だ。

期末テストも終わり、冬休み。
テストの打ち上げに4人でクリスマスパーティーをすることにした。

今日は七尾くんのお家でパーティーをするため、男子は飾り付け担当。
私と結ちゃんは食べ物の買い出し担当として、準備を進めていた。

買い出しの途中、オシャレな雑貨屋さんに寄り、お互いにクリスマスプレゼントを買うことにした。

私は結ちゃんへ即決で可愛いテディベアをプレゼントすることに決めた。
その後、まだ結ちゃんは買い物が終わっていない様子だったので店内を散策してみると、ストームグラスがキラキラ輝いて見えた。

ストームグラス。天気や気温の変化で中の液体が変化するというものだった。
オシャレだなぁ…そして思い浮かんだのは真緒くんだった。
真緒くんにあげたら雨が好きになってもらえるかな?

そう思っていると体が勝手に動き、ストームグラスを真緒くんにプレゼントすることも急遽決めた。

「冴、早かったね!」
「うん!すぐ決まっちゃった。」
「それにしてもいっぱいじゃない?」
「1個は結ちゃんの!もうひとつは…ママにあげようかなって。」
「素敵!あ、快からまだって連絡きてる。急いで戻ろ!」


結ちゃんには嘘をついてしまったが、ごめんなさいと謝る気持ちと共に、七尾くんの家に向かった。


パーティーもひとしきり盛り上がった帰り道。


いつも通り、真緒くんと歩いて家に帰っていた。

「ねえ、少し寄り道して帰らない?」
「いいよ!」

そう話をして立ち寄ったのは近くの公園。
小さい時にはよく2人で遊んだ思い出のある場所だった。

「この滑り台で冴、よく怖いよ〜って泣いてたよな」
「今は怖くないよ!」
「まだ怖かったらさすがに驚く」
「あはは」

寒い中だったが、寒さを忘れるほどに昔話にも花が咲いた。

「そう言えばこれ!真緒くんにもクリスマスプレゼント!」

さっきの買い物で買ったストームグラスを渡した。

「さんきゅ。なにこれ?」
「ストームグラスっていうんだけど…真緒くんに雨を少しでも好きになってもらえたら嬉しいなって思って。」
「ありがとな。気にしてもらって。」

だって真緒くんが大切だから。

なんて伝えたいけど、なんだか告白みたいで言葉に詰まってしまった。

「なあ冴。」
「なに?」
「俺、大切にしたい人がいてさ。」
「…うん。」

まさか、クリスマスの夜に真緒くんの好きな人の話を聞くことになるとは…
聞きたいような聞きたくないような、胸がぎゅっと縛られる感覚で苦しさもある中だったが、話を聞いた。

「昔から、バスケしてる俺をかっこいいって言ってくれて、応援もしてくれた人でさ。」
「うん。」
「ただ、その人が苦しかった時に一緒に居てあげられなかった。」
「うん。」
「でも俺、今はそばにいてあげられるんだ。苦しかったことも辛かったこともあったけど、今思えば全てその人のそばに居てあげるためだったのかなって。」
「……」
「その人の笑顔みると安心するからさ。」
「……」

凄く素敵な人なんだ。そう思うと、自分の惨めさに涙がこぼれた。
あーぁ。クリスマスなのに、なんで泣いてるんだろう。


「だから……だから冴。もう、苦しい思いさせない。俺がずっとそばで冴を守りたい。ずっと好きだった。子どものころから。これからも一緒にいてほしい。」


突然の話に頭が真っ白だった。

真緒くんの大切な人って……私?


「わ…私?」
「冴以外に誰がいるの」
「結ちゃんとか…」
「片桐は小さい時知らないし。」
「そっか……。夢…じゃないよね?」
「ああ、現実。」

空を見上げると一番星が輝いていた。
夢か夢じゃないか、そんなことはわからないけれど、真緒くんに伝えたい気持ちは1つだった。


「私も真緒くんが好き。真緒くんを支えたい。一緒に居たい。」
「今でも十分支えてもらってる。」

そう言いながら真緒くんは私の頭を撫でた。
寒いはずなのに暑くなるほど、全身は熱を帯びていた。

コツンとおでこをつけ名前を呼ばれた。

「冴」
「真緒くん」

そして優しくて甘いキスが唇へ落ちた。


プレゼントのストームグラスが徐々に変化し、全体が白くなった。

2人のその場所に雨ではなく、雪が祝福したようだった。