秋も本格的になり、かなり気温も冬に近づいてきた。

今日は先月、真緒くんと約束したお出かけの日。
行き先は紅葉が見れる、大きな公園へ行くことにした。

久しぶりのお出かけにワクワクしつつも、なんとなく緊張していた。


「わぁ…綺麗!」

黄色や赤に色づく葉や、秋の花々に囲まれ緊張も解け、気持ちも穏やかだった。
真緒くんは私がどんどん進んでいくのを少し後ろから追いかけてきてくれた。

ふと、段差につまづくと手を引いて助けてくれたり、やっぱり頼れる真緒くんでもあった。

公園でピクニックをしながらお昼ご飯を食べ終えると、珍しく真緒くんが観覧車に乗る提案をしてきた。

数分待ち、観覧車に乗ると真緒くんから再び話が始まった。

「冴。聞いてほしいことがある。」
「なに?」
「中高のこと。空白の4年間のこと。」
「いいの?」
「冴に聞いてほしいって思ったから。」

今まで聞けなかった過去の話。
やっと真緒くんのことを知ることができる。

「ふぅー」

息を吐き、ゆっくりと真緒くんが話始めた。


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中学に入った真緒くんは変わらずバスケが上手く、1年生として入って最初の試合に先輩たちとともに選抜に選ばれたらしい。

これは私もおばさんと一緒に見に行った試合。

その後も変わらず試合に出続けていたようだが、それをよく思わない先輩たちが増えていった。

中学1年生の2学期。
そこから少しずつ歯車が崩れていった。

まずは部活の休憩中。普段は和気あいあいとしていた部内の雰囲気が変わり、休憩中でも真緒くんは先輩にこき使われ、動きっぱなし。休憩を取らせてもらうことができなかった。

それからどんどん嫌がらせはヒートアップ。
学校内でも寮でも嫌がらせが続いたらしい。
バスケシューズが消えたり、ユニホームが消えたりは日常的だったよう。

そして、パニックの症状が出るほどのトラウマ。雨。
これはトイレでひたすら水をかけられたことがあったからだそう。
水をかけられることはよくあったらしいが、この日は息をするのもギリギリなほどに水をかけられていたらしくその状態で過呼吸になり、それが先生に見つかって事が大きくなった。これが高校1年生の冬の出来事。

約4年間のイジメが発覚し、真緒くんの心身の状態を確認した上で転校することとなり、今に至るというものだった。


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観覧車の一周する約10分。
短いようで長いこのひと時。
真緒くんの4年間の真実を教えてもらった。

観覧車を降り、すぐに気持ちは切り替えられず、近くのベンチに座り私は話始めた。

「ねえ…どうして今教えてくれたの?」
「冴に知ってほしいと思ったから。」
「そう…。真緒くん…。」

気づけば私は真緒くんの服の袖をぎゅっと握っていた。
もう、真緒くんにどこへも行って欲しくない。
私が守りたい。そう思った。

「もう、大丈夫だから。雨の時は迷惑かけるかもだけど、それ以外は。」
「バスケは?」
「趣味程度でやろうかなって思う」
「そしたらまた、見に行ってもいい?」
「もちろん。」

重い話を受け止めつつも、今を生きている真緒くんに感謝もしながら、この日はたくさん笑おう。
そう思いながら夜まで楽しんだ。