その声はとても控えめの優しく。癒されるような、透き通った声。

……って聞き惚れている場合じゃなかった。何て返そうか。

女の子と話すって本当に難しいものなのかもしれない。

本当に一言二言、言葉を交わした事が精いっぱいで。

気付けば彼女はもう行かなくてはならない時間となっていたようだ。

だからどうしても聞きたかった言葉を、思い切って言う事にした。

「家族が入院って事はまた此処に来るって事だよな?」

もし遠い場所に住んでいる、とかならば此処に来る事は稀だろう。

でも近ければまた何度でも来る。毎日とはいかなくてもすぐに会える。

「俺は冴村蒼一。草冠の“アオ”に、数字の“イチ”で蒼一。あんたは?」