ああ、診察に来た子なのかな?なんて漠然な事を考えながら、

ただその子をじっと見つめてしまう。これじゃあまるでストーカーだ。

話しかけてみよう。そう思った瞬間だった。

心臓が今までにないくらいにドキドキする。

思えば女の子と話すと言うのは全くと言って良いほどなかったんだっけ。

大丈夫。なるようになる。ナンパだと思われなければ、の話だけど。

「あんた、何処か悪いの?」

漸く出せた言葉がこれ。“あんた”は流石にないだろうと言って後悔する。

それでも彼女は嫌がる素振りを見せずに、俺の問いかけに答えてくれる。

「えーっとですね……この病院に家族が入院していまして。

それのお見舞で此処に来たのです」