「やばくない?」

「ガラの悪い連中と殴り合ったらしい。」

学校へ行くと、いつも通り杉谷くんの悪い噂が耳に入ってくる。これが当たり前の日常になってるんだから、いい加減うんざりしてる。

「祈歌《きう》!」

教室へ入ると、葉南《はな》が私に駆け寄った。

「杉谷くん、昨夜揉めたらしいよ。」

「揉めたって?」

「うん。ガラの悪い人たちと殴り合ったみたい。玄関で杉谷くんと会ってさ、それで、酷い怪我してたから、大丈夫?って聞いたら、めっちゃ睨まれた。」

杉谷くんが怖かったと、葉南は言う。その顔は彼に対し怯えてるようだった。

「停学とか有り得るんじゃねぇの?」

「杉谷学校来てたよな?」

「先生に呼ばれたりして。」

杉谷くんの席にカバンはなかった。
学校には来てるみたいだけど、何処に居るんだろう。って、なんで私が気にしてるわけ。

悪い人。ではないと思うけど、でも、失礼な人だったし。別に、どうでもいいし、杉谷くんなんか。友達でもなんでもないんだから。

「杉谷くん、怖いよね。」

「葉南は心配してるだけなのに、睨むとか、杉谷くん嫌い。」

私も、みんなと同じで杉谷くんへの印象は良くなかった。