「まじか。苦いのに。」

嫌そうな顔をして言う彼は、杉谷《すぎたに》愛来《あき》くん。

「私は、ブラックが好きだから。じゃあ。」

関わりたくなくて、話を早く終わらせ、背中を向けたのに。

「早瀬《はやせ》って、スイーツ系女子かと思ってた。」

なんで呼び止めるかな?

怖い人って言われてるし、機嫌損ねたらアウト?それなら、気を付けなきゃだよね。

「なんで?」

「だって、カバンにスイーツいっぱい付けてんじゃん。」

甘いものよりご飯系が好きで、ジュースよりブラックコーヒーが好きで。だけど、スイーツ系は可愛くてキーホルダーは集めてしまう。だから、カバンは確かに甘々だけど。って、なんで杉谷くんが、そこまで見てるわけ?

「それは、可愛いからで。」

話してる途中、杉谷くんが自販機におカネを入れて、ミルクティーを買った。

「ブラック飲めるのは意外だった。」

意外って、なんか、ひとこと多いんですけど。

「それ、うまいよな。」

私が抱きしめてるフルーツサンドを指差して、杉谷くんは微笑んだ。

あ、笑った。怖いだけの人かと思ってたのに。

「俺も好き。」

「あ、いや、これは友達ので。私は、こっち。」

ピザパンを彼に見せる。