頬に絆創膏。傷だらけ。殴り合いとか、痛いだけなのに、どうしてそんな事をするんだろう。

私は、彼から視線を逸《そ》らす。

「痛いのは、そっちでしょ。昨日の夜、殴り合いしたって、みんな言ってた。」

「あーー、まぁ、うん。別に、大した事じゃねぇし。」

そう言って、自販機に小銭を入れると、コーヒーのボタンを押した。

「にっが!お前よくこんな苦いもん飲めるよな。」

一口飲んで、苦そうな顔をして舌を出す。

「杉谷くんが、甘党すぎるんだよ。」

「甘いもんは正義っしょ。ん、お前にやる。」

差し出された缶コーヒー。

これは、私に飲めと?それじゃあ、か、か、間接キスじゃん!無理、無理無理!彼氏いない歴=年齢だから当然キスの経験もないし。

「飲まねぇの?」

「…あのさ、普通、女の子にそんな事、しないよ。」

「飲み回しとか、嫌いなタイプ?」

「友達と!なら、しますけど?杉谷くんは、男だし…私は、女の子なんだけど。」

間接キスになっちゃうの、気にしないわけ?

「じゃあ、いいじゃん。捨てるのもったいねぇし、やるよ。好きだろ、コーヒー。じゃあ俺、帰るから。」

断ったはずなんだけどな。なんで私の手の中にはコーヒーがあるんだろう。