食べながら、チラッと自販機の方に視線を向けた。そこには、杉谷くんの後ろ姿があった。

飲み物、何にしようか悩んでるのかな?

声をかけるなら、今がチャンス?

私は席を立つ。

「どした?トイレ?」

スプーンの上で、器用にフォークでパスタをクルクル巻く葉南。

「あ、うん。ちょっと、行ってくる。」

「うん、行ってらっしゃ〜い。」

私はトイレに行くふりをして、食堂を出た。

「…す、杉谷くん。」

杉谷くんは振り返る。目が、合った。

「早瀬、お前大丈夫なの?」

「え?あ、うん。だいぶ、良くなったし。」

「ならいいけど。無理はすんなよ。」

「うん、ありがと、心配してくれて。」

「おー。あのさ、これ本当にうまいの?」

自販機の下の段、缶コーヒーのブラックを指差す。

「うん、美味しいよ。私は好きだけど。」

「ふ〜ん。じゃあ、ちょっと飲んでみっかなぁ。お前は?」

「私は、トイレ?行くし。」

「やっぱ、腹、痛いんじゃね?」

痛々しいその顔で、私を見ないで。心配になっちゃうでしょ。どれだけの傷を負ってるのかな、とか、色々、心配になるから。