「目つき悪いよね〜。」

「口も悪いし、近寄りたくない。」

「怖いけど、美形じゃない?」

「美形の不良か。」

私の通う高校の1学年の間で、「怖い美形」という噂が流れていた。

その噂の人は1年C組の男子で、私のクラスメートである。

その人は、いつも単独行動で、授業中は寝てるかケータイをいじってるかのどちらかで、騒ぐタイプではない。私が見たところ、群れを嫌う一匹狼みたいな感じだ。

噂通り目つきも口も悪く、キレたら何するか分からない。中学では問題ばかり起こしていたらしい。これも噂でしかないけど。

「祈歌《きう》〜!」

午前の授業が終わり、お昼休み。
私が教科書をカバンに入れている時、クラスメートであり友達の葉南《はな》が、突然私に飛びついてきた。

「どーしよ、まじでどーしよ〜〜!」

その顔はすごく困っている様子で。

「どしたの?」

「お弁当忘れてきちゃったよ〜。せっかくママがハンバーグ作ってくれたのに〜!!」

「それはショックだよね。購買行く?それとも、食堂?」

私は葉南の頭を優しくポンポンして、教科書を片付けた。

「購買行く〜。祈歌はお弁当?」

「今日は買おうと思って。」