タナトスとの一心同体の暮らしが始まってから、3ヶ月。

僕は今まで感じたことのない充実感で満たされていた。学校では、勿論イジメられる事もなくなり、早川との交際も順調だ。

今まで皆の輪の外から、指を咥えてみてるしかなかった僕が今やクラスの中心で、いつもキラキラ輝いている誰もが羨む存在になっていた。

「黒田。お前、今日は掃除当番だろう!サボるなんて許さないぞ」

放課後、早川と手を繋いで帰ろうとする僕を担任の(はやし)が呼び止めた。

「あ、先生、吉田(よしだ)が、どうしても掃除当番、代わりたいってさ」

僕の吐いた嘘に教室から飛び出してきた、吉田郁人(よしだいくと)が、何か言いたげにしている。

僕は吉田が口を開く前に畳み掛けた。 

「僕の代わりにどうしても掃除やりたいって言ったよね?」

僕と吉田は僕がタナトスと一体化する前までは、クラスで唯一会話をする仲だった。

僕は日々の寺本からのイジメや、死神神社にお参りに行く事を吉田にだけ話したこともあった。

ただ今やクラスの人気者である僕に、こんな陰キャが友達だなんて恥ずかしい。

陽の当たる者の側に影を持つ者は必要ない。

「満くんの言う通りです……先生、僕にやらせてください」

吉田は僕と視線を合わす事なくボソリとそう呟くと、箒を片手に教室へと戻って行った。