〇学校・家庭科室(午前)
家庭科の授業でクッキーを作っている。
朱里「友樹に美味しいクッキー渡すために頑張るぞー!」
腕を突き上げてやる気満々の朱里。
芽衣「報告してくれたとき、嬉しかったな」

〇(回想)芽衣の部屋(昼)
クリスマスパーティーの翌日。
芽衣に付き合ったことを電話で報告する朱里。
朱里「無事、付き合うことになりました!」
芽衣「おめでとう!私も嬉しい!」
朱里「過去一で喜んでくれるね」
芽衣「相馬くんとなら心から祝福できる」
朱里「確かに、今までの彼氏とは散々な別れ方ばっかりで見る目なかったもんな、私」
芽衣「その度に、もう彼氏なんていらないって泣くのに数日後には好きな人できたとか言うんだもん」
朱里「その節は大変ご迷惑をおかけいたしました」
芽衣「でも、前回の彼氏と別れたときは私の前で泣かなかったでしょ?」
朱里「それは…」
芽衣「相馬くんには弱いところも全部見せられる、それなら大丈夫だなって思ったの」
朱里「私、芽衣が幼馴染で本当によかった」
改めて友情を確かめ合った芽衣と朱里。
(回想終了)

〇学校・家庭科室(午前)
クッキーの型抜きをしている。
朱里「芽衣は渡したい人いないの?」
芽衣(怜王くん、クッキー好きかな?)
朱里「その顔は、いるな?」
芽衣「んー、まぁ…」
朱里「迷ってるなら渡してみなよ」
焼き上がったクッキーを丁寧にラッピングして、顔を見合わせる芽衣と朱里。
芽衣・朱里「できた!」
芽衣「きっと相馬くん喜んでくれるよ!」
朱里「芽衣も喜んでもらえるといいね」

〇学校・屋上(昼休み)
朱里「これ、家庭科の授業で作ったんだけど食べる?」
友樹「ええの?めっちゃ嬉しい!」
朱里から手作りのクッキーを貰って嬉しそうな友樹。
友樹「美味しい!朱里の愛情が込められてるからやな」
朱里「そ、そんなに大したものじゃないけど!」
友樹のストレートな言葉に照れている朱里。
友樹「ありがとうな」
朱里「…どういたしまして」
その様子を遠目に見ていた芽衣と怜王。
芽衣「れ、怜王くんはクッキー好き?」
怜王「それは期待してもいいってこと?」
コクンと小さく頷いた芽衣はクッキーを渡す。
怜王「いただきます」
クッキーを食べる怜王を緊張の面持ちで見ている芽衣。
怜王「ん、うまい」
それを聞いてホッと一安心する芽衣。
怜王「あーん」
ハートのクッキーを手に取り、芽衣の口に入れる怜王。
クッキーを口に咥えた芽衣に怜王は顔を近づけていく。
芽衣(へっ?待って…!近すぎるよ!)
目をギュッと閉じる芽衣。芽衣が咥えているクッキーを食べる怜王。ギリギリ唇が触れない距離。
怜王「ごちそうさま」
舌をぺろっと出して口角を上げる怜王。あまりの近距離に放心状態の芽衣。

〇学校・教室(放課後)
帰る準備をしていると急に後ろから両手で目元を隠される芽衣。
芽衣「えっ!?」
佐倉「だーれだっ!」
芽衣「んー、佐倉くん!」
佐倉「んふふ、バレちゃった」
パッと手を離して楽しそうに笑う佐倉。
佐倉「はい、これ」
家庭科の授業で作ったハリネズミのクッキーを芽衣に渡す佐倉。
芽衣「わぁ、ハリネズミだ!かわいい!」
佐倉「喜んでる針山さんもかわいいよ」
和気あいあいとした雰囲気に包まれている芽衣と佐倉だけの空間。
それを教室の外から見ていた怜王は表情を曇らせた。

〇学校・体育館(朝)
数週間後。友樹から朱里へ送られてきたメッセージ。
友樹【体育館で待ってる】
いつもより少し早めに登校した朱里。体育館に近づいてきたところで、ドリブルをしている音が聞こえてくる。
朱里が体育館に足を踏み入れると同時に、友樹が丁度シュートを決めた。それを見て拍手をする朱里。
友樹「どう?かっこええやろ?」
笑顔で頷く朱里。
友樹「これを渡したかってん」
バウムクーヘンのイラストが描かれた紙袋を朱里に渡す友樹。
朱里「バウムクーヘン?」
友樹「俺、女の子からお菓子もらうの初めてやからお返しわからんくて…」

〇(回想)友樹の部屋(夜)
スマホで“女の子 お菓子 お返し”と検索している友樹。
友樹(朱里ってマシュマロ好きやったよな)
“好きな子へのお返しにマシュマロはNGです”
友樹(お菓子によって意味とかあるん!?)
“マシュマロはあなたのことが嫌いという意味があります”
友樹(あかんあかん!マシュマロはやめや!)
いくつものサイトを見て念入りに調べる友樹。
“バウムクーヘンは幸せがずっと続きますようにという意味があります”
友樹(バウムクーヘンの生地ように幸せを重ねる…これや!)
(回想終了)

〇学校・体育館(朝)
友樹「これからも朱里と一緒に幸せな日々を過ごしていきたいなと思って、これにした」
朱里「私も!」
勢いよく抱きつく朱里を嬉しそうに受け止める友樹。

〇学校・屋上手前の階段(昼休み)
階段に座ってお洒落な紙袋を芽衣に渡す怜王。
怜王「クッキーのお礼にどうぞ」
芽衣「ありがとう!開けてもいい?」
紙袋の中から箱を取り出して開けるとカラフルなマカロンが入っていた。目をキラキラと輝かせる芽衣。
芽衣「どれもかわいくて迷っちゃうな」
楽しそうに悩んでいる芽衣の顔を覗き込む怜王。オレンジ色のマカロンを手に取った芽衣。
芽衣「怜王くんはどれにする?」
そう言って芽衣が隣を向くと怜王の顔が至近距離に。
芽衣(わっ!相変わらず近すぎます!)
怜王「俺も食べていいの?」
勿論と言わんばかりに頷く芽衣。怜王は茶色のマカロンを取り、芽衣と一緒に食べる。
芽衣「ん〜、おいしい!オレンジかな?」
怜王「俺のはコーヒーだ」
幸せそうに食べる芽衣を見て怜王も自然と笑みが溢れる。
お返しに渡すお菓子にはそれぞれに意味がある。マカロンは“あなたは特別な存在”だ。
鈍感な芽衣がこの意味に気づく日は来るのだろうか。

〇学校・教室(放課後)
帰る準備をしている佐倉の背後からひっそりと近づき両手で視界を遮る芽衣。
芽衣「だーれだっ!」
佐倉「ふふ、針山さんかな?」
芽衣「せいかーい!」
佐倉「仕返しされちゃった」
楽しそうに笑い合う芽衣と佐倉。
芽衣「はい、どうぞ」
ピンクのリボンでラッピングされた桜のアイシングクッキーを佐倉に渡す芽衣。
佐倉「わー!かわいい!」
芽衣「佐倉くん好きかなって思ったの」
佐倉「うん、桜もピンクも好きだよ」
佐倉(針山さんのおかげでね)