〇学校・屋上(昼休み)
友樹のことを意識して目を合わせることができない朱里。
朱里(今までどうやって話してたっけ?)
そんな朱里のことが気になってチラチラ見ている友樹。
友樹(こっち見てくれへんかな)
そのぎこちない様子を見て芽衣は考えを巡らせる。
芽衣(ぎゅっと距離が縮まるチャンスがあれば…あっ!)
名案を思いついて立ち上がる芽衣。
芽衣「クリスマスパーティー!…しませんか?」
怜王「いいじゃん」
朱里「うん、楽しそう!」
友樹「場所は俺に任せてや!カフェやってる叔父さんに聞いてみるわ」

〇カフェ(夕方)
クリスマスパーティー当日。閉店後に使わせてもらえることになった友樹の叔父さんが営むカフェ。
友樹「ほな、飾りつけしよか!」
芽衣(これは朱里と相馬くんをふたりきりにするチャンス!)
芽衣「私、獅子尾くんとケーキ取りに行ってくるね!」
怜王「行ってくるわ」
カフェを出てケーキ屋さんに向かう芽衣と怜王。

〇ケーキ屋さん(夕方)
クリスマス仕様になっている店内。予約していたブッシュドノエルを受け取り、外に出てすぐのところでばったり会った佐倉に声をかけられる。
佐倉「あれ、針山さん?」
芽衣「佐倉くん?すごい偶然だね!」
笑顔で怜王に会釈する佐倉。怜王も軽く会釈をする。
佐倉「それ、ブッシュドノエルでしょ?」
芽衣「えっ!何でわかったの?」
佐倉「僕もブッシュドノエル予約してるから、針山さんも一緒かなって」
芽衣「私たち好み似てるよね」
楽しそうに話す芽衣と佐倉を見て不満そうな怜王。
佐倉「じゃあ“お友達”と楽しいクリスマスを」
満面の笑みで怜王を見る佐倉。

〇カフェまでの帰り道(夕方)
怜王の不機嫌なオーラを感じ取って黙る芽衣。
重い沈黙が続く中、怜王が口を開いた。
怜王「俺も下の名前がいい」
芽衣(え、俺も?もしかして、佐倉くんのこと下の名前で呼んでるって勘違いしてるのかな?)
芽衣「あの、獅子尾く…」
怜王「怜王」
恥ずかしそうに名前を呼ぶ芽衣。
芽衣「…怜王くん」
怜王「今はそれでいいよ」

〇カフェ(夕方)
無言でバルーンを膨らませている朱里と友樹。
お互いチラチラ見て、目が合いそうになったらすぐに視線をそらす。
朱里(せっかく芽衣がふたりきりにしてくれたのに緊張して何も話せないよ…!)
友樹(ここは俺がバシッといかなあかんよな)
友樹「あのさっ!…これ、つけようか」
覚悟が決まらず、咄嗟にガーランドを取り出す友樹。
友樹(あー、そんなことが言いたいわけじゃないねん!)
壁にガーランドを飾っている。不意に触れる手。
咄嗟に手を引こうとする朱里。その手を掴む友樹。
朱里「ごめんっ…え?」
見つめ合う朱里と友樹。
芽衣・怜王「ただいま〜」
そこに戻ってきた芽衣と怜王。
朱里と友樹は慌てて手を離す。
芽衣「顔真っ赤だよ?」
朱里「あー、芽衣も一緒に飾りつけしよ!」
友樹「そうや!ほら、怜王もやるで!」
みんなで飾りつけやケーキなどの準備をして、いよいよクリスマスパーティーが始まる。
友樹「聖なる夜にかんぱ〜い!」
芽衣・朱里・怜王「かんぱ〜い!」
乾杯の音頭に合わせてグラスがぶつかる音が聞こえる。
ケーキを食べている芽衣と友樹。
芽衣「ん〜、おいしい!」
友樹「ハリちゃんの言う通り、このケーキ選んで正解やったな!」
ほわほわとお花が見えてくるほど平和な雰囲気。それを見ている怜王。
朱里「なーにムスッとしてんの」
怜王の頬を人差し指でつつく朱里。
怜王「好みが合うって強いよな」
朱里「まーね、でも獅子尾だけの強みもあるでしょ」
怜王「そうだよな」
朱里「言っとくけど私はどっちの味方でもないから、芽衣が幸せになるサポートをするだけ」
怜王「ありがとな」
そう言って微笑む怜王。
朱里「その笑顔、私じゃなかったら恋してたよ」
怜王「鹿野は友樹一筋だもんな」
朱里「へっ、何で知ってるの!?」
怜王「気づいてないの友樹くらいだろ」
朱里「私、そんなにわかりやすい…?」
自分の顔をペタペタと触る朱里。
それからも楽しい時間を過ごし、お開きの時間に。
友樹「あとは俺が片付けるから大丈夫やで!」
朱里「わ、私も!片付けしてから帰る」
その様子を見てニヤニヤしている芽衣と怜王。
怜王「じゃあ、お言葉に甘えて」
芽衣「お先に帰らせてもらおうかな」
頑張れと身振り手振りで伝える芽衣。

〇帰り道(夜)
すっかり暗くなった空。冬の空気は刺すように冷たい。
両手を擦り合わせている芽衣に手を差し出す怜王。
戸惑いながらも犬がお手をするように手を乗せる芽衣。
怜王「ふははっ、お利口さんだな」
そのまま芽衣の手を包み込むようにしてポケットに入れる怜王。心の中は大パニックの芽衣。
芽衣(手が、ぎゅってされてる!)
あっという間に家の前に着いて解放された手。ちょっぴり寂しそうな芽衣。そんな芽衣の頭に手を乗せる怜王。
怜王「またな、芽衣」
芽衣「えっ、い、今、下の名前…!」
怜王「お返し」
いたずらが成功した子どものように笑って来た道を戻っていく怜王。その場に立ち尽くす芽衣。
芽衣(今、芽衣って呼ばれたよね…?)

〇カフェ(夜)
朱里と友樹は、ふたりきりで片付けをしている。お互いにソワソワして落ち着かない様子。
朱里・友樹「あのさっ…!」
友樹「あ、どうぞ」
朱里「いや、お先にどうぞ」
友樹「いやいや、そっちこそ…って決着つかへんな」
朱里「あははっ、確かに」
いつものように楽しそうに笑い合う朱里と友樹。
友樹(こうやって朱里とずっと一緒に笑ってたいな)
友樹「真面目な話があんねん」
覚悟を決めて姿勢を正す友樹。
友樹「俺の好きな人は面倒見のいい姉御肌で、豪快に笑う姿がかわいくて、男に慣れてるんかなと思ったら本当はすぐに顔赤くしちゃうピュアな子やねん」
真っ直ぐ朱里を見つめる友樹。
友樹「朱里のことが好きや」
朱里「私の好きな人はお調子者だけどみんなから愛されてて、遠くにいても笑い声ですぐにわかって、落ち込んでるときはそっと寄り添ってくれる温もりがある人」
友樹の目をしっかり見て話す朱里。
朱里「友樹のことが好き」
思いっきり友樹に抱きつく朱里。
友樹「よかったぁ〜」
安心してへなへなと腰が抜ける友樹。そのまま床に倒れ込み、友樹の上に朱里が覆い被さるように乗っている。
絡み合う視線。キスをする流れだと思った友樹は目を閉じて唇を尖らせる。
それを見て朱里はギリギリまで顔を近づけ、唇にキスすると見せかけて友樹の頬にキスをする。びっくりして瞬きが増える友樹。
朱里「ふふ、唇にすると思った?」
いじわるな笑みを浮かべる朱里。
余裕そうな朱里の腕を引き寄せて顔を近づける友樹。
少し動けば触れそうな距離にキスを覚悟して、朱里は目を閉じる。
それを見て満足そうな友樹は朱里の頬にキスをする。
目を開けた朱里の顔は真っ赤になっていた。
友樹「これでおあいこやな」
いたずらな笑みを見せる友樹。
聖なる夜に幸せのベルが鳴り響く。