〇カフェ(放課後)
パンケーキを食べている芽衣と朱里。
朱里「どうしよう、友樹のこと好きになっちゃったかも」
芽衣「いつもと違って弱気だね」
朱里「だって、今までのタイプとは真逆なんだもん」
芽衣「あー、確かに歴代の彼氏は大人っぽい人たちだったね」
朱里「ザ・友達って感じだったのに、友樹が女子と仲良くしてると嫉妬しちゃう自分がいて」
今まで見たことがない乙女な朱里。
芽衣「それが恋だよ」
朱里「まずは友達脱却!恋愛対象として見てもらえるように頑張る!」
ガッツポーズをして気合いを入れる朱里。
朱里「で、芽衣はどうなのよ?」
芽衣「少しずつだけど、男の子と話せるようになってきた気がする」
朱里「佐倉くんとも自然に話せてたよね」
芽衣「このまま克服して、恋する日も近いかもしれない!」
朱里と同じようにガッツポーズをする芽衣。

〇学校・教室(休み時間)
真面目な顔で心臓を押さえる友樹。
友樹「最近、朱里を見るとココがきゅーってなるんやけど何かの病気なんかな」
怜王「それはいつ頃からですか?」
医者の真似をして話を聞く怜王
友樹「先週くらいからやな」
メモをとるフリをする怜王。
怜王「なるほど、他に症状はありますか?」
友樹「少し会えなかっただけで会いたいなって思ったり、朱里の笑ってる顔を見ると嬉しくなったり、とにかく気づけば朱里のことばっかり考えてんねん」
怜王「それは、恋煩いですね」
友樹「恋…俺、朱里に恋してるんか!?」
その大声でクラス中の視線を集めてしまい、恥ずかしそうに口を押さえる友樹。
友樹「怜王はハリちゃんといい感じやろ?」
怜王「針山のことは好きだけど、わからない」

〇(回想)怜王の中学生時代
怜王に初めての彼女ができた。
彼女「獅子尾くんのことが好きです、付き合ってください!」
怜王「俺も好きだよ」
この言葉に嘘偽りは無かった。
思春期真っ只中の男子の会話といえば、彼女とどこまで進んだかという内容がほとんど。例に漏れず怜王も聞かれた。
怜王「俺は何もしてない」
男「さすがに手は繋いだだろ?」
怜王「繋いでない」
男「キスしたいなとか思わねーの?」
怜王「俺は思わないな」
男「やっぱりモテる男の余裕は違うわー!」
怜王(一緒にいるだけで楽しいけどな)
それからも進展することはなく、付き合う前と変わらない日々が続いた。
そんなある日、彼女から突然別れを告げられた。
彼女「獅子尾くんの好きと私の好きは違う、別れよう」
怜王(好きに違いがあるのか?)
これがきっかけとなり、怜王は好きという感情がわからなくなっていた。
(回想終了)

〇学校・教室(休み時間)
友樹「ハリちゃんが他の男子と一緒におったら、どう思う?」
怜王「嫌だった」
友樹「じゃあ、ハリちゃんに彼氏ができたら?」
怜王「もっと嫌だ」
友樹「それが答えなんちゃう?」
怜王「これが恋、か」
友樹「怜王もなかなか重症やな」

〇学校・教室(放課後)
自分の席に座る芽衣と隣の席に座る怜王。
芽衣「本当に無事でよかった」
ハリネズミのマスコットを手に乗せて撫でている芽衣。
怜王「こいつも寂しがってた」
怜王はライオンのマスコットを芽衣が持っているハリネズミのマスコットに近づける。
芽衣「ふふ、かわいい」
そのままマスコット同士がくっつくとまるでキスをしたかのように見える。それを見て芽衣は照れている。
芽衣(ち、ちゅーした…!)
その様子を廊下から見ていた佐倉。
佐倉(針山さん、あんな表情するんだ…)