〇学校・図書室(放課後)
芽衣と怜王が隣同士、机を挟んで向かい側に朱里と友樹が座っている。

〇(回想)学校・教室(HR)
もうすぐで夏休みだと浮き足立つ生徒たちに突きつけられた現実。
担任「期末テストで赤点がひとつでもあった生徒は、夏休みも学校に来て追試を受けてもらう」
HR(ホームルーム)が終わると同時に朱里の席へ駆け寄る芽衣。
芽衣「どうかお助けを!」
勉強が苦手な芽衣はいつも朱里に教えてもらい、何とか赤点を免れていた。
それは友樹も同じで怜王に泣きついていた。
(回想終了)

〇学校・図書室(放課後)
そうして行われることになった勉強会。難しい顔をしながら問題集と向き合う芽衣。怜王はノートの端に何かを書いて芽衣に見せる。
怜王【針山のこともっと知りたい】
それを見た芽衣は嬉しそうにペンを動かす。
芽衣【私もです】
怜王【好きな食べ物は?】
芽衣【甘い物!】
怜王【俺は焼き鳥が好き】
芽衣【好きな動物は?】
ライオンの絵を描く怜王。その独特な絵に芽衣は顎に手を置いて考える。ちょっぴりムスッとしている怜王。
怜王【ライオン】
そのライオンの隣にかわいいハリネズミの絵を描く芽衣。
怜王【ハリネズミ!】
芽衣【正解!】
芽衣(面と向かって話すより楽かも?)
それからもノートの上で会話は続き、お互いのことを知ることができた。
怜王【連絡先、交換しよう】
スマホを片手に芽衣を見つめる怜王。急いでスマホを手に取る芽衣。
芽衣の連絡先に初めて男子の名前が追加された。それが嬉しくてニマニマしながらスマホの画面を見ている。
友樹「あー!ええなー!」
朱里「しーっ!」
その様子を見ていた友樹の羨ましそうな声が静かな図書室に響き渡る。
朱里は人差し指を唇に当てて静かにするよう注意する。
友樹「俺とも連絡先交換しようや」
朱里「せっかくだし、グループも作っちゃおうよ」
怜王「面と向かって話せないときはコレで」
優しい笑顔で芽衣にスマホを見せる怜王。
芽衣(獅子尾くん、気づいてたんだ…!)
この勉強会のおかげで無事に赤点ゼロで期末テストを乗り越えた。

〇芽衣の部屋(昼)
芽衣は涼しげなグラスに入った麦茶を飲みながら、まったりと夏休みを過ごしていた。
机の上に置いてあるスマホの通知音が鳴る。画面を見ると勉強会のときに作ったグループの新着メッセージ。
朱里『夏まつり、みんなで行こう!』
てっきり朱里は彼氏と行くと思っていた芽衣。
友樹『ええやん、楽しみやなー!』
怜王『行く』
次々に増えていく返信を見て芽衣も指を動かす。
芽衣『行きたい!』

〇芽衣の家・リビング(昼)
夏まつり当日。母に浴衣の着付けをしてもらっている芽衣。針山家と家族ぐるみで仲良しの朱里はソファで寛いでいる。
芽衣「そういえば、彼氏と行かなくていいの?」
朱里「あー、なんか友達と行くらしい」
髪の毛を上げていつもとは違う雰囲気の芽衣。
朱里「おー!いいじゃん!」
芽衣はひまわりの浴衣にふわふわの帯。朱里はボタニカル柄の浴衣。
芽衣・朱里「行ってきまーす!」
浴衣姿の芽衣と朱里は下駄を履いて夏まつり会場へ向かった。

〇夏まつり会場・入口(昼)
先について待っている怜王と友樹。怜王は紺色無地の浴衣。友樹はグレーにチェック柄の浴衣。女性からの視線を集めている。
女「あの人、めっちゃイケメンじゃない?」
女「隣の人も爽やかでかっこいい!」
そこに下駄の音を響かせてやって来た芽衣と朱里。
芽衣「お待たせしましたっ!」
友樹「俺らも今、来たところだよ」
朱里「なーにかっこつけてんのよ!」
朱里と友樹がわちゃわちゃしている間に芽衣に近寄り耳元で囁く怜王。
怜王「浴衣、似合ってる」
芽衣の耳が熱を帯びていく。
芽衣「獅子尾くんも似合って、ます」
少し言葉を詰まらせながらも素直に伝える。

〇夏まつり会場(昼)
夏まつり会場に入ってすぐのところにあるお面屋さんを見つけてテンションが上がる友樹。
友樹「おー!お面じゃん!」
朱里「小学生みたいね」
小柄な芽衣は人混みで流されそうになっている。
怜王「俺から離れるなよ」
芽衣は怜王の浴衣の袖を控えめに掴む。
朱里「かき氷食べよう!」
芽衣はイチゴ、怜王はオレンジ、朱里はメロン、友樹はブルーハワイのかき氷を食べている。
友樹「見て!舌が青くなった!」
子どものように舌を出している友樹を見て笑う朱里。小さな口でパクパクと食べる芽衣を見ている怜王。
怜王(本当に小動物みたいだな)
芽衣(めっちゃ見られてる!顔が近すぎます!)
かき氷を食べ終えて、今度はたこ焼き屋さんへ。
友樹「やっぱりたこ焼きはマストやんな」
朱里「んー!おいひい!」
なぜか誇らしげな友樹とたこ焼きを頬張る朱里。
怜王「熱いから気をつけろよ」
芽衣「は、はいっ!」
またもや怜王に見守られながら食べる芽衣。

〇夏まつり会場(夕方)
それからもヨーヨー釣りをしたり、射的をしたりと夏まつりを満喫する一同。
しかし、その楽しかった雰囲気は一転した。
朱里「…え」
突然、立ち止まった朱里。
友樹「急に止まってどうしたん?」
朱里の視線の先には、腕を組んで歩いている親密そうな男女がいた。
朱里「私の彼氏」
悲しさと苦しさに歪む朱里の表情。
朱里「ちょっと行ってくる」
彼氏の方へと一直線に向かう朱里。それに気づいた彼氏は驚いている。
朱里「今日は友達と来てるんじゃなかったの?」
彼氏「あー、それは…」
女「この人、誰?」
彼氏「えっと…」
どちらの質問にも歯切れが悪く、明らかに動揺している彼氏。痺れを切らした朱里は彼氏と撮ったラブラブなツーショットを浮気相手の女に見せる。
朱里「それじゃあ、お幸せに」
元彼氏と浮気相手に背を向けて歩き始めた朱里。
その背後では女の怒り狂った叫び声が聞こえてくるが、一切振り返ることなく芽衣たちのところに戻ってきた。
朱里「ふぅー、スッキリした!」
ぎこちない笑顔を見せる朱里。
朱里「あっ、喉乾かない?私、ラムネ買ってくるね!」
人混みの中に消えていく朱里を追いかけようとする芽衣。それを制止したのは友樹だった。
友樹「俺に任せてよ」
急いで朱里の後を追いかける友樹。心配そうな表情の芽衣に声をかける怜王。
怜王「友樹は信頼できるやつだよ」

〇夏まつり会場付近(夜)
朱里は荒ぶる気持ちを落ち着かせるために人混みを抜け夏まつり会場から少し離れたところで座り込んでいた。
駆け足で追いかけてきた友樹はそっと朱里の隣に座る。
友樹が来てくれたことに驚く朱里。
朱里「私なら平気だっ…」
強がる言葉を遮るようにして朱里にお面をつける友樹。それが引き金となり我慢していた感情が涙となって溢れ出す。
朱里「ぐすっ…せめて彼女だって言ってほしかった」
友樹「うん」
ただ静かに朱里の言葉を受け止める友樹。
朱里「私、見る目ないのかな…」
友樹「次は大丈夫だよ」
朱里「ははっ、何で言い切れるのよ」
普段は見せない真剣な表情で根拠のないことを言う友樹に思わず笑みが溢れる朱里。
友樹「やっぱり笑ってる方がかわいいな」
朱里「な、なにそれ」
いつもとは違う友樹の雰囲気に朱里はドギマギしてしまう。
恋が終わった夏、新たな恋が始まる予感。

〇夏まつり会場(夜)
一方の芽衣と怜王はベンチに座って休憩していた。
慣れない下駄で長時間歩いた芽衣は足の指が擦れてしまっている。それに気づいた怜王は芽衣の足元で膝をついて下駄を脱がせる。
怜王「乗って」
芽衣の前に背中を向けて屈む。
芽衣(ど、どういうこと!?)
混乱している芽衣を誘導しておんぶする怜王。
怜王「家まで送る」
芽衣「あ、歩けます!」
ジタバタと降りようとする芽衣の小さな抵抗を笑って流す怜王。
怜王「暴れたら落ちるぞ」
それを聞いた途端に大人しくなる芽衣。心地良い揺れと体温を感じて身を委ねる。
芽衣「楽しかった、です」
怜王「俺も」
そう言って振り向いた怜王の顔が芽衣に近づく。
お祭りで食べたりんご飴のように顔が赤くなる芽衣。
芽衣(ち、近すぎます!)
毎回、更新されるドキドキにこれからも芽衣は耐えられるのか。