家に帰りいつも通りご飯を食べ風呂に入り、
部屋でのんびりと過ごす。
そんないつもと変わらない、
何でもない1日の終わり、

のはずだった。


……死のうとした。
あの時の僕は、
確かに死ぬ覚悟があった。

覚悟、なんてそんなかっこいいものじゃないかも知れない。

そんな僕のなけなしの覚悟は、
望月に簡単に奪われた。

望月灯里、
高校に入学してはじめて出会った女子。

1年の時から同じクラスだけれど、
彼女はカーストトップの一軍女子、
僕は二軍、三軍の冴えない男子。

関わる事なんて到底ない。

むしろ、望月が僕の名前を覚えていた事さえも驚く程だ。

望月はたくさんの人間に囲まれて
いつも笑っている。

勉強もそれなりに出来ていたと思う、
運動は得意なはずだ、
体育祭では活躍していた。

学園祭では確かステージ発表で今流行りのダンスを踊っていた、と思う。
僕はそんな派手な物は見てないから、実際にどんな感じだったかは分からないけれど、
後日まわりの人間が口々に褒めていたのを見る限り、
望月には人を惹きつける何かがあるのだろう。

見た目だって悪くない。
いや、良い方なんだろう。

嫌味のない、整った顔立ち。

……考えれば考える程分からなくなる。

何で、
人間として完璧に近い望月が、
僕と一緒に死のうとしたのか。

理由を聞いても到底納得出来るものじゃない。

やっぱりからかわれたのか?
何て思いもあるが、
賭けにのると言った時に見せた望月の笑顔が、
何だか凄く、
胸に残ったから、
だから、
望月の言葉を
信じる事にした。

賭けについては明日、
望月が詳しく話すと言っていた。

……明日、
また、望月と話すのか。

上手く話せるのかな。
今日は勢いもあって話せたけど、
だいたい、僕なんかと話してたら望月の株が下がるんじゃないか?

……なんて、
惨めな心配をしながら僕は眠りについた。

いつも、
明日が憂鬱なのに、

何だか今日は、

早く明日になってほしいと、

そう思いながら、

僕は深く深く、
眠りについた。