望月の手を握ったまま、
僕達は踏み切りから離れた。

まだ心臓がドクドクと煩い。

「どうしたの?
せっかく一緒に死ぬチャンスだったのに」

僕の顔を覗き込みながらそう聞く望月からは何の悪意も感じない。
からかう感じなんて全くない。

……本当に、
本気で、
僕と一緒に死のうとしたのか?

こんな、
いてもいなくてもどうでもいい、
こんな僕と?
クラスでも人気の望月が?

「……どうして、
僕なんかと一緒に死ぬ、なんて言えるんだよ……?」

ポツリと溢れた言葉に、
望月はまたきょとんと不思議そうな顔をした後に、
やっぱり笑顔になって、言った。

「だって、
ひとりで死ぬなんて寂しいじゃん」

「え……?
それだけ?」

「そうだよ?」

「……はは、
あはは!」

望月の訳の分からない理由に、
もう僕は笑うしかなかった。


「のるよ、その賭け」

ひとしきり笑った後、
僕は自然とそう口にしていた。

そんな僕の言葉に望月は、
やっぱり笑った。

月明かりに照らされた望月の笑顔は、
綺麗なのに、
何だか消えてしまいそうに儚くて、

僕は彼女を真っ直ぐに見る事が出来なかった。