1年後、模型が完成してカンナ研ぎの修行が終わると、オヤジに連れられて重要文化財の修復現場へ行くようになった。
 そこは待ちに待った夢にまで見た特別な現場であり、今までの仕事場とはまるで違っていた。
 なんとも言えない木の香りが漂っている上に、黙々と仕事を進める宮大工の息遣いが充満しているのだ。
 心が震えないわけがなかった。
 
 こここそ私の居場所だ、と感じた妹は早く一人前になりたいと強く思い、先輩宮大工の一挙手一投足に目を凝らした。
 目で盗んだ。
 空中で手を動かし動きを真似た。
 動きを盗んだ。
 来る日も来る日も。