その余韻が残る中、トランペットの音色がさり気なく耳に忍び込んできた。
 それはわたしたちをそっと包み込むような優しい音色で、大好きなクリス・ボッティの演奏に違いなかった。
『EMBRACEABLE YOU』
 彼女はうっとりとしたような表情でその音色に抱き締められていた。
 
 曲が終わると、彼女が目を開けてわたしに微笑んだ。
 その瞳は僅かに潤んでいるように見えたが、少し照れたように視線を外して窓の方へ向けた。
 
「綺麗ね……」

 空には無数の星が(またた)いていた。

 その時だった、
 左上から右下へ星が流れた。
 尾を引くようにゆっくりと。
 奇跡のような瞬間にわたしは息を呑んだ。
 彼女は魔法をかけられたように流れ星の残像を追っているようだった。
 わたしは上着の内ポケットから小箱を取り出し、彼女の目の前でそっと開けた。
 すると、彼女の瞳に光り輝くダイヤモンドが煌めき、時が止まったかのようにまばたきを忘れた彼女の目から眩い真珠の粒が溢れた。
 星降る夜、神秘な瞬きが、永遠を刻み始めた。